鳥衝突日本委員会

Reactive or Proactive?

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現在の鳥衝突防止対策の基本的な考え方についての疑問がいくつか出されている。それを紹介することを通して、筆者の考え方も披露したい。

 

現在の予防対策は、一義的に衝突報告による過去の衝突データに依拠している。したがって、その考え方は、鳥衝突データベースの精度を向上させて、よりきめ細かで有効な対策に結びつけようというものである。これはこれで正しいのであるが、それはあくまで、過去の事象に学んで被害損害を最小にしようという、対処的(リアクティブReactiveな)姿勢であるといわざるを得ない。簡単に言うと、これまでこんな事が起きているから、それを回避しましょう、という態度である。

しかしこれでは、事の本質を捉えて問題を解決する、あるいは発生を防止するという姿勢にはなりえない。事態や事情の変化に正しく対応していけないのであるから、発生を未然に防ぐことにはならず、常に後手を踏むことになる。その変化が見えないかぎり、手の打ちようがない、と途方にくれるのである。現在の我々の鳥衝突防止対策の状況はこのようなものなのである。

予防対策とはそうではなく、事の本質をとらえた対策とそのための態勢(Proactive)を取るべきだという考え方がヨーロッパの関係者により提案されており、事実研究開発がその方向に向けて行われている。それは、依拠するデータは過去の衝突経験だけではなく、衝突要因の現況を把握・捕捉して、それに即応できる態勢を組むということである。

簡単な例で説明しよう。自然災害のなかで台風の被害損害は非常に大きく、それに対する対策が大掛かりにとられているのは、よく知られているし理解されている。台風の襲来やその被害については、過去に相当の量のデータがあり、それに基いて台風飛来の経路を求めようとしたことがかつてあった。現在でも夏前の台風の経路と秋台風の経路の特徴的な違いは、気圧配置との関係でよく知られていて、過去の台風飛来との比較で紹介されることがある。もし対策がこのデータしか使わないとすると、それは全く対処的であり、あまり当てにならないのは容易に推測されるであろう。このような対処法を「リアクティブ」というのである。

そこで、現在では、多くの物理理論を使った台風の特性の理解からその経路を予想し、さらには現況を衛星・レーダや航空機観測、地上の観測網の充実とそのデータを連携的に利用することで、台風の経路やスケールの推移を予想して、対策を取っている。台風が発生すると、天気予測図上にその予測経路が示されるが、その予測幅は遠くにいけば広がっている。これはそれだけ予測確度が低いことの表れではあるが、少なくもそのようなProactiveな方法で予測をしていることを示してもいるのである。余談だが,この台風対策の基本的姿勢の転換は,伊勢湾台風被害を契機として気象庁が富士山レーダの設置に踏み切ったことによって実現された.このことは,後に作家となった新田次郎の提案で,ProjectXでも有名な逸話である.

地震に対しても同様な姿勢で、その予知対策が取れないかと、研究が進められているのである。これまでに発生した莫大な数の地震発生記録から、震源予測などの空間位置の予測はかなりの精度で知られるようになったが、発生の時間予測については、過去の記録からだけでは不可能なことが受容されてきている。

鳥衝突防止対策にもこのような考え方を取り入れて対策をたて、防止を実効的にしようというのが、ヨーロッパ特にオランダやドイツでの考え方である。そこでは、鳥レーダの開発に力点を置いて現状の把握を精度良く行い、一方では、季節性・移動性の鳥の習性等も織り込んで、現況情報提供システムの構築が行われている。つまり鳥予報図を継続的に提供しようとするもので、実際の開発はかなりな段階まで行われている。